この記事のカテゴリー
タイパと和食器
こんにちは店主です。
和食器は高い?
最近は少なくなりましたが、以前はよく若いお客様から「これ5個セットのお値段ですか?」と尋ねられることがありました。
そんな時には、「うーん、この小鉢5個作るのに2500円だと1つ500円なんですぅ~。私どもがいただく手間賃を除いても、粘土を練ってロクロでひ
とつひとつ整形し、乾燥させ、窯で素焼きし、釉薬をかけて、また窯で本焼成して…となると、このお値段では難しいんです。誠にすみませ~ん」と、優しくご説明してお詫びしたものでした。
多くの聡明な方々は、その説明に納得してくださいますが、それでもどこか「晴れ晴れ」とはいかない表情で、「そうなんですね…」とおっしゃることが少なくありません。
そのお気持ち、よく分かります。 量販店や通販で見かける大量生産された商品と比較すれば、その価格差に驚かれるのも無理はないのです。
タイパ
最近は「タイパ」(Time Performance)という言葉が流行りのようですが。 若者文化に関連して使われる言葉で、時間をどれだけ効率的に使えるか、どれだけの成果や満足感を短時間で得られるかを重視する考え方のようです。具体的には、映画やドラマを倍速で観たり、勉強の際に効率的に要点を学ぶために要約動画を視聴したりするなど、限られた時間で最大限の成果を追求するものだそう。
これが不思議なもので、人生残り少なくなりつつある店主や女将よりもずっと若く、人生の残り時間が沢山あるはずの皆様の方がタイパにこだわっていらしたりします。 いつも仕事場の窓からお空や桜の木をボォ~~ッと見つめては女将によく小言をもらっている店主には無縁の世界なんですね。
タイパと手仕事
たとえば、自動車産業大手の企業では、ネジ1本に至るまでの徹底したコスト管理と作業の効率化が、秒単位で行われています。それにより大量生産が可能となって、現在の価格が実現していると聞きます。 振り返って、 【おとなの和食器屋】さんすいの周りの手仕事陶芸業を見渡してみると、前述したように、手間と時間をかけた手作業が中心です。 量産品や工業製品が千や万単位で生産されるのに対し、陶芸品は極少量生産です。
確かに、少しでもコストパフォーマンスを向上させる努力は続けていますが、タイムパフォーマンス(タイパ)という観点から見ると、まったく別世界の話です。手仕事や極少量生産にこだわる限り、タイパの向上は非常に難しいのです。
タイパと真逆な和食器
しかし、これは単なる手間やコストの問題ではありません。陶芸は、作り手が私たちの意向を受け、想像力を研ぎ澄まし、高い技術を持ってゆっくりと創作していくものです。そのプロセスは、タイパとは真逆の世界なんです。
時間をかけて丁寧に作り上げたものには、それ相応の価値が宿ります。もし、簡単に済ませようとすれば、必ずしっぺ返しが来るもので保育や教育にも通じるものがあると思います。
そんな「タイパとは縁遠い素敵な世界」から届く和食器やガラス食器たちはすべて手間と時間を惜しまずに作り上げられた一品一品。 例えば、お茶の時間に、美しい和食器でゆっくりとお茶を楽しむひととき。あるいは、季節の変わり目に、新しい器を使って家族と一緒に食卓を囲む瞬間。そんな日常の中で、これらの器たちが与えてくれる豊かさは、時間をかけて選び、手にしたからこそ得られるものだと私共は考えています。
大量生産のものに比べて高価に感じられるかもしれませんが、その背景には、作り手の情熱と技が込められています。ですから、ぜひその器たちに込められた想いも一緒に感じながら、使っていただければと思います。私たちが提供する和食器やガラス食器を、日々の生活の中でどうぞ大切に長くお楽しみください。
蛇足ですが、途上国に対しても日本円は随分安くなりました。 当然日本の製品は海外から安く見えるわけで、タイパとは無縁な日本の手仕事の和食器たちも海外で見直されているようで、それはそれで結構な事だと思うこの頃です。
さて・・・日頃のタイパでできたあなたの貴重な時間。 ゆったりと過ごす相棒の和食器は、タイパじゃない世界で作られたお品ですか? それとも・・・