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和食器の「あそび」
今となっては幸せな以前の風景です
草木も眠る午前2時すぎ・・・
ソ~っと玄関を開けて
ソ~っと寝床に潜り込んで
シメシメこれで狸寝入り、
朝帰り隠し成功! イ~ッひっヒ
とその時
隣でスヤスヤ女将の寝言?
「オハヤイ・オカエリデ」
ヒェ~!^_^; 起きてたッ 思わずシェ~~~
靴下も脱げそうなくらい驚く私。
大人の和食器屋さんすいの、よくある風景
人生にゃ遊びがぁ大切で、この緩さちゅうモンがないとやっていけません。
↑
緩すぎ~ッ 女将
長い前フリ、失礼いたしました。
一年で一番寒い「大寒」を迎えるとさすがに身体も冷えて、お鍋や熱々の麺類が恋しいくなりますね。
土鍋はなぜ割れない
先日、織部一人様土鍋をお求めのお客様から、
「さんすいさん。土鍋ってなんで割れないの?」
とチコちゃんのようにサラリとご質問をいただきました。
それはですね
アタシのように緩いから・・・
お客様:ハ?
遊びが必要なんですアソビが
お客様:ハ??
だから、カーッと熱くなっても遊びがある人は簡単にキレたりしないでしょ。それと一緒。
答えが不真面目、緩すぎ、慣れ慣れしい と、女将からきつく叱られました。
粒子の緩さ
高温でしっかりギュッと焼き上げられた器を火にかけると普通は見事に割れます。
これは、直火に当てられた部分が急激に熱膨張してバランスが崩れる為だと思います。
膨張率も大きさもバラバラの粒子がピッタリとくっついている構造だから。
実はこの織部土鍋などの土の粒子は緩く、くっついてるんです。 間に「遊び」があるからキュと下だけ膨張しても耐えられるわけです。
耐熱というと昔から使われている土鍋に使う伊賀の土などが有名なのですが、この土鍋も同じです。
粒子がゆる~い関係の方が熱衝撃には強いのです。
朝昼晩あまりに仲良く拘束しあってるような恋人たちが危ういのに似てまして、店主のように半分放し飼いされていると長持ちします。
緩さは味
普段より比較的低い温度で焼成したり元々焼き締まりにくい土を使ったりします。粒子の間が空いているので凹凸感があってとても味があるのですが、水分が染み込みやすいので使いはじめはお粥を炊いていただくと万全ですね。
ご飯土鍋は普通のご飯を炊けばよいのでその必要はありません。
さらに割れない土鍋
ペタライトという土
さて、さっきから熱膨張・熱膨張ってうるさいんですが、膨張しなけりゃイイんでしょ
と現れたのが、現在土鍋の原料の主流になりつつあるペタライトと言う種類の希少土です。
リチウム長石という種類なのですが、素地で4割くらい、釉薬は6割くらい混ぜる事で耐熱耐火の食器ができてしまいます。 コレも普通よりは低い温度で焼きます。とは言っても1200度を超えない程度。
粗い土を混ぜたりするのはご法度ですので先程の織部土鍋のような味は出ませんが、手間いらずで便利ですね。
おとなの和食器屋さんすいでも数点がこの種類の土を使っています。
好みは自由
どちらの耐熱耐火和食器を使うかは、皆様のお好み次第。 味あるけど何だか手がかかって母性本能くすぐられるカレと、キリッとハンサムでちょっと真面目すぎるけど素敵なカレ、の違いのようなモノでしょうか。
どちらでも、イヤイヤ!どちらとも? テーブルの上は自由恋愛と行きたいモノですね。
まとめ
伝統的な耐熱耐火の土と比較的新しい耐熱耐火の土。 どちらも一長一短あるわけで、私共は使い分けをしています。たとえば夫婦でしっぽり湯豆腐するときは織部一人用土鍋(私共はこれでちょうど良い大きさ)が味があります。グラタンなどは新しい耐熱耐火土の和食器を使います。
三昧(さんまい)という言葉があります。 贅沢三昧などちょっとネガティブな使い方が多いようですが、本来は「何ものにもとらわれず、自由にふるまう」の意味かと思います。
普通「器三昧」というと、懐具合も考えず手に入れて楽しむような印象を受けますが、本当の器三昧とはこの色々な場面で自由に色々な器を使い分け組み合わせて愉しむ事ではないかと思います。
耐熱耐火の和食器もどうぞ三昧に。