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和食器の「穴」を考える
こんにちは、今回も女将にかわって店主のコラムです。
和食器の穴は噴火口?
土物和食器(陶器)には必ず穴がある事はご存知かと思います。
直径が1~2mmくらいの穴から、目に見えないくらいの小さな穴まで色々なのですが、
例えばこんな感じです。よ~くご覧になってくださいませ。
この穴、実は噴火口のようなもので、
灼熱の窯の中で生地(原料の土)や釉薬(ゆうやく)から主に二酸化炭素が噴出した跡なんですね
想像してみてください・・・
真っ赤に燃え上がるような窯の中で沸々と器に現れては消えを繰り返す泡の風景・・・
ホットケーキを焼くときの初めの時の状態がなんだか似てます。
和食器の穴は器の吐息
さて、その穴(^^)/ 茶陶で有名な伝統の萩焼きや志野焼きなどでは「風景」として喜ばれています。 以前このメルマガでもお話ししましたように貫入(ひび割れ模様)の一部と申してよいのでしょうか、お茶が染み込んで美しい模様を作りだす事があるからです。
ところで、粉引の器では御本手(ごほんで)と呼ばれる薄い赤からオレンジの窯変が出る事があります。こんな感じです。
これもその御本手の中心部には必ず小さなピンホールがあります。 よろしければ食器棚の粉引の器をご覧になってみてください(^^)
灼熱のその窯の中でその穴からシュー(←なんて音が聞こえるわけもないのですが)とガスが吹き出て色が不思議な変化を織りなしていたのですね。
「和食器の穴」は器の吐息の跡なのです。
穴は心配ご無用
よく穴(ピンホール)が心配で
ここから漏れないんですか~ というご質問を頂戴しますが、「普通はもれません(^^)」
クレーター状になっているだけで、ホットケーキに貫通した穴が開かないのと一緒で、凹みがあるだけです。
ただ、この窪みが生地の部分までは通っている事があり、粉引などのお品では水や脂などが生地(粉引の場合は生地の上の白い化粧土)に届くので、染みが目立つというわけです。
実は、土物和食器のそのほぼすべては、使用しているうちに水や脂を多少なりとも吸い込んでいると申し上げても過言ではないと私は思っています。
粉引などの白い明るい器を除いて、それは目立たないだけなんです。
穴の処し方
使い手はその穴を
「どうしてくれよう」編 です(^^)
「およそ土物和食器といわれる器にはすべてこの小さな穴がある」とも申し上げましたが、ほとんどのお品は例えば水を入れると少なからず染み込んでいます。
必ず・・・なんです。
粉引(こひき・こびき)の器などで水が水玉模様に染みていくのがわかったりしますが、これは表面の釉薬と素地の間に白い乾いた土(化粧土)があるから。
つまり穴から入った水が、その化粧土に染み込んでいく風景なのです。その他の和食器ではあまり目立ちませんが、粉引では白い色ゆえに目立ってしまうのです。
ただ、綺麗な水であれば、乾けば元通り。
そうなんです、
時間がかかりますが必ず元通りになります。
と・こ・ろ・が・
これが脂(油分)となるとお話しは別で、実はなかなか取れません。
そう、その点ではお洋服と同じなんですね。
和食器屋では、染み込みが比較的強い和食器については、ケイ素という自然界の土に含まれる(もちろんミネラルウォーターなどにも通常は微量含まれますし、未精製の穀類や、野菜、豆類にも含まれます)成分を含んだ水を和食器に軽く含ませてその穴にしみこませる事もしております。これによって脂などの染みをある程度防止する事ができます。
しかし~
あくまで「ある程度」 なんです。
和食器の染み予防の方法
というわけで、まずは染み予防の為に大作戦といきましょう。(あくまで目安です。お買い上げの際のご説明を優先させてください)
*「和食器はきれいな水と仲良し」作戦
ご使用の直前に数分で結構ですので、綺麗な水に浸けて、さきに水を含ませる事によって脂染みや汚れを防ぎます。
水染みは気にしません。消えるのですから。 素焼きや備前などの焼き締めの和食器は、最低でも5分以上の処置が必要です。
*「和食器は落ち着かない」作戦
お食事が終わった後は、流し台にポンと置きっぱなし・・・。なんてのが一番よくありませんので。
なるべく早く洗浄しましょう。 「ラップをかけて冷蔵庫で保存する器」には残念ながら土物和食器は不向きです。磁器や樹脂系の器で代用してください。
*「和食器は湿気がキライ」作戦
水とは仲良しといいながら、器に残った湿気は大敵。カビなどの原因となるからです。十分な乾燥が必要です。 できれば乾燥機などを使っていただき、乾燥させてあげてください。 特に、素焼きや備前などの焼き締めの和食器はかなりの乾燥が必要ですので、さらに天日干しなどが理想的です。
和食器屋では、染みやカビなどのトラブルの対処方法をお買い上げのお品ごとにご案内しておりますので、どうぞ保存していただきますよう。
またお買い上げ後のお品についても、様々なご相談をお受付しております。
いかがですか?
ちょっと面倒なようですが、それでも土物和食器には余りある魅力があるのも事実ですよね。
茶道で、貫入(かんにゅう:お茶の染み込みによるひび割れ模様)やお茶で色付いていく細かな穴などを美しい「絵」として大切にしますが、これも見方次第。
つまり
土物和食器を楽しく使うコツは
◆心の目◆ 次第とも言えます。。
どうぞ楽しく充実した「和食器ライフ」をお過ごしくださいますよう。
手前味噌にはなりますが、【おとなの和食器屋 さんすい】では、お求めいただいた和食器の種類ごとに取り扱い方法を詳しくご案内していますので失敗をする事も少なく、お買い求め後も安心していただいております。 お求めいただいた後も私共のお客様に対するケアは続くと考えています。