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和食器のキタナイはキレイ
和食器屋さんすい、お昼いただいてお腹いっぱいの休息・・
テレビのビールCM見ている店主
店主:(デレ~~~)
女将:なんですかそのワンちゃんが背中を掻いてもらっている時のような顔
店主:あ・・・いゃ、びびびビールが美味そう・・
女将:あ~~~っ エ? 満島ひかりチャンじゃぁないの
先月まで同郷の環奈ちゃんカンナちゃん言っとったのに、ったく。
同じ美人でもいつからスレンダー好みになったのかな~
店主:い・・・いやこれはだな。同じ「器」でも見る人によって時代によって評価が変わるように・・
女将:ワケのわからん言い訳しないで、正直に「気が変わった」と言いなさいな。
店主:結婚生活は真面目に続けています。
女将:当たり前です。さっさとお仕事! お客様がお待ちです。
というわけで、今回は店主の美女遍歴・・・
ではなく和食器の好みのお話しを少しだけ
綺麗=汚い
のっけから少しおカタイ話しですいません。シェークスピアの戯曲「マクベス」の魔女の台詞。
「綺麗は汚い♪汚いは綺麗♪」
コレ実に意味深な言葉で、同じ「物」や「者」や「事」は見る方向や人や方法や時代によっては綺麗であったり汚かったりする、つまりは正しかったり間違ってたりするという話かと思っています。
例えば女将の大好きな納豆。確かに美味しい食べ物ですが、あの香りというか匂いは腐敗臭と紙一重。現に外国人の皆さんの初納豆体験はなかなか厳しいものがあります。
シェークスピア流に言えば「美味しいは臭い、臭いは美味しい。」といったところでしょうか。
和食器の綺麗
実は和食器でも見る方によって色々。例えばこんな酒器ですが・・・
「ン〜〜〜なんて良い酒映り」と思う方もいらっしゃる一方で、「こ・・・これはちょっと」と後ずさりされる方もおられるわけです。
実は物凄い高温で焼き締めて出来上がるので、窯の寿命さへ縮めると言われる逸品です。燃料費の超高騰の折、これからの制作が難しくなっています。
ステイン「stain」
英語で「stain」ステインという言葉があります。コレ、直訳というかそのまんま訳ですと「汚れ」や「染み」「着色」となってしまいます。
私たちはこの言葉を結構使っていて、例えば私たちの歯に付着するコーヒーやお茶の色素も「ステイン」と呼んでますし、金属のナイフやフォークの素材は、鉄にクロムやニッケルを加えてサビ汚れしにくい「stain less」(和名ステンレス)と呼んでいます。
stain=困りもの・・・という印象ですね。
ところが
例えば家具や木製カトラリーなどの職人さんたちが使う「ステイン」は着色を意味します。このステインを施す事で美しく落ち着いた深い色と際立つ木目を楽しむ事ができます。 落ち着いた色の家具やカトラリーなどの木製品はステインを施してウレタンなどの仕上げをします。
拭き漆(うるし)も自然の色が付いているのでこれも一種のステインとも言えると思います。
貫入について
もう少し申し上げると、例えばこの3つの同じカップの写真をご覧ください。
皆様ご存じの貫入(かんにゅう)は、土物和食器ならではの美しい変化です。陶器(土物和食器)は窯で冷えて固まる時に、素地と表面の釉薬の収縮率の違いによって細かい亀裂が入ります。その亀裂にお茶などの液体がしみ込むことにより、時間とともに風味豊かなパターンが生まれます。日本の文化では、このような変化は、自然の経過と共に生じる美しさとして高く評価されます。
これもどうも英語の対訳というか正しく等しい意味の単語が思い浮かびません。
「cracking」は亀裂という意味ですし、その亀裂にお茶汚れが入っていくのを我々は「なかなか良い味」と感じるわけですから。
確かに英語の「cracking」は「亀裂」を意味しますが、これは単に物体の表面にできるひび割れに過ぎません。日本語の「貫入」は亀裂だけでなく、亀裂に染み込んだ茶や他の液体によって時間の経過と共に美しさが増すというプロセスを含んでいます。
「あら~綺麗に貫入はいってて素敵ですねぇ♪」と来客は言
います。
でもコレ、英語だと「stain」つまり一般的な意味として忌むべきヨゴレなどになってしまいます。
やはり和食器の貫入は「stain」ではなく
時間の経過とともにお茶で染まり、日本文化の中で好まれている陶器の美しいひび割れ
The aesthetic cracks in pottery that are stained over time by tea and are appreciated in Japanese culture.
とちゃんと説明するべきでしょう。
stainの語源
実はstain という言葉の語源は古いフランス語の「destain」や「deteindre」、これはさらにラテン語の「tingere」に由来しているそうで。ラテン語の「tingere」は、「染める」または「色をつける」という意味で使われていて、中世フランス語では、「destain」は「染料を取り除く」または「色を変える」などの意味で使用されており、これが英語に借用されて「stain」となったようです。
実は、英語の「stain」は、もともとは物体の表面に色をつけるという意味で使われていましたが、時間が経つにつれて、「汚れ」や「しみ」など、色が不本意に付着した状態を指す言葉としても使われてるようになったと聞きます。
綺麗は汚い
何と、現代では
歯の「汚れ」も、家具の「染料」も同じ「stain」と呼ばれているわけです.
つまり時代の流れで意味が変化した言葉が様々な文化の中で違う意味を持って両方で生き残っているという興味深いお話しです。
和食器でも、洋の東西でも時代でも見る人によっても、「キレイはキタナイ」「キタナイはキレイ」なんですね。