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和食器作りの省エネ
女将:ア~ッ また使ってるぅ・・・!\(`o'”)
飲みかけたお茶をプっと吹き出す店主
女将:一日に何個お湯呑み使うの? もう!
彼女によると洗うお水がもったいない、お金の問題ではない、世界には水がなくて困っている人がたくさんいるのに~
という事なんですが、でもねぇ・・・お湯呑み色々楽しいから・・・つい・・(>_<)
省エネ・省資源と毎日のようにニュースで流れるこの頃ですが、本日は和食器の制作現場での省エネ・省資源についてお話させてください。
無駄にしない省資源
さんすいがお届けする和食器やガラス食器やカトラリーのほぼすべてが、何らかの手仕事で作られているのはご存じの通りですが、その中でも最も多い土物和食器のお話しです。
練って、成型して、削って、乾燥して、素焼きして、施釉して、本焼きして、冷やして、お掃除して・・・と、少々気が遠くなるほどの長い手間と時間をかけて出来上がる和食器たちですが。
乾燥して高台周りなど削りを入れたりする時に、たくさんの土の切れ端が出てくるわけです、これを捨てていると土とはいえ廃棄物となるわけです。意外に馬鹿にならない量で、器づくりの全体の20%ほどの量に及ぶ時もあります。
カラッカラに乾いたこの土の切れ端を集めて水分補給して練り直すのは大変な重労働。もちろんそれを毎回手仕事で行う方も沢山います。
中にはこんな機械を使っている工房もあります。真空土再生の為の機械(ブレンド機)
これに土の切れ端などと水を上の蓋を開けて入れると空気を抜いて手前の穴から出てくるという便利な機械。
普通は皆さん土練機(どれんき)という土をまぜる機械はお持ちですが、この真空にしてくれる機械はチトお高い。
ナント3桁するらしいです、驚きです。
沢山の種類の土を使う工房にはお掃除の手間を考えると不向きですが、10年といわず長持ちするそうで「省資源」「省コスト」で元は取れると思います。
失敗を減らす努力が省エネ
工房の方々に省エネの一番の方法は? と聞くと「何といっても焼成の失敗をいかに減らすかダっ」と口をそろえて言います。
実はその為に本当に沢山の事に気を使いながら細心の注意を払って焼成しています。
●窯積み
いつもと違う構成、例えば大型和食器がドンッ・ドンッと多い時などは火の周りが遅くなったりします。
その点を予測しながら窯に慎重に積めていきます。
●火の調整
酸素を十分に供給する酸化焼成は比較的安定した焼き方。 意図的に酸素不足にする還元焼成では、どれくらい酸素不足にするかは剣が峰を渡るようなものだと言います。
刷毛目金彩印花紋スープカップの最初の窯の品は、その典型です。(現在お届けの品は還元焼成を少し抑えています)
これを酸化焼成すると真っ白の綺麗な焼き上がりとなるわけで、このような和食器では どこまで「味」を出すか・・・という剣が峰を渡るある意味「冒険」をしているのです。
だから「廉価大量生産」には向かないわけですね。
ここでクイズなのですが「真夏」と「真冬」では窯の温度はどちらが上がりやすいでしょう?
答えは、「真冬」。
そんな馬鹿な~・・・というお声が聞こえてきそうです(笑)
作り手は「引き」という言葉を使いますが、これは煙突からの空気の抜け具合をさします。
つまり外の空気と窯の空気の温度差があった方が煙突からよく空気が上へ抜けて燃焼しやすくて窯の温度が上がりやすいという事なんです。
だから季節によって火の周り方にも注意をする事になります。
もちろん湿度も大切で、例えば出来立て自然乾燥した水分がたっぷりの器を「素焼き」した後の窯は、比較的多く水分を吸っています。 この窯で赤絵の器などを焼成すると色がどんより曇ってしまいます。
この写真は、それほど大きくはない窯ですが、それでもお茶碗だけなら200弱入るガス窯です。それでも燃料は一回1万円以上かかります。
つまり冒険をすればすべて失敗や一部失敗もある事です。
「私、失敗しないんで・・・」と言う作り手は私の知る限り100%おりませんが
「あたし、失敗少ないんで・・・」という作り手はナカナカの腕の持ち主なのかもしれないし、冒険の少ない人かもしれません。
ここらへんが目利きとしては難しいところではあります。
ガス窯の調整口 (微妙な調節を窯と向き合いながら行います)
和食器作りの省エネ まとめ
世間では、CO2排出の為に自動車を電気やハイブリッドにすると話題になっています。 いずれ私共の和食器やガラス食器の業界もすべて電気窯や水素窯?になるのかもしれません。
とはいえ昔から工房の皆様は「土の切れ端の再利用」などを行い省資源を。知恵と経験をもとにした「窯積み」や「火の調整」などを綿密に行いながら、失敗を少しでも少なくして省エネに努めています。
このような細かな工夫の積み重ねる努力が大切なのだと思います。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。