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失敗しないキレの見分け方
こんにちは、【おとなの和食器屋 さんすい】の店主乙木(おとぎ)です。
今回のお題は「キレ」です。
「キレ」「切れ」とは
三浦大知さんの、キレッ、キレのダンス?
店主の中学時代の同窓会での昭和男子の主な話題?
(養毛剤とキレの悪さ)
などではありません・・・
片口の和食器や、急須、醤油さしなど「きゃ~~素敵!」と勇んで買ってきて、いざ使ったらダラダラと口の下からボディに後ろ漏れしてショック・・・
なんてご経験ありませんか? キチンと止まると当たり前ですがとても気持ちのよいものですし、衛生的です。
それが今回のお題「キレ」です。
【おとなの和食器屋 さんすい】のリアル店にお越しになれば、いつでもお水を入れて見てご覧いただくのですが、通販となるとそうもいきません。
そこで、通販でのお買い物でもできるだけ失敗しないように、できる限り「見ただけでわかる『キレ』の良さ」がわかるような方法についてお話ししてみます。題して・・・
見るだけでわかるキレの観察ポイント
潔くない下向きの口
これが一番わかりやすいコツです。口を真横から観察します。 写真のようにキュと横や下を向いている事は良い事(^o^)です。
*逆に上を向いて直線で切ったような口は要注意です。 さんすいでもアート色の強い品で見受けられますが、その旨ご説明をしてお届けしています。
そういえば昔、学校や公民館に大量に置いてあった大きな磁器の呉須(青い模様)の急須がこのスパっとした口で、ダダ洩れしてました(^^; 布きんなど敷いて置いていたものです。
下の写真は、黒織部急須のキレのよい横顔です。 先代からの民藝店の血筋のせいか、このような実用性に優れているような急須の横顔を見ると惚れ惚れしてしまうのです。 ちょっとマニアックですいません。
いかがですか? 切れの良い横顔でしょう? 店主や女将は、片口や急須などの口を見る時は必ずその口先を横から見て触ってみてまずキレを判断します。 よほどアート色が強い飾りのような口は別として、実用的な和食器ならばとても大切な事ですので。
ポッテリ雫のような
口の先の先の下の下あたりに釉薬が比較的たくさん施されていたり、厚みが十分付けられていると素晴らしいです。
不思議なものでこの厚みである程度しずくが止まってくれます。
当店のお品ですとこんな感じ。黒釉たすき紋醤油さしの画像です。
口先の下に丸く見える雫のようなものは液体ではありません。 この醤油さしと一体の出っ張りです。 思わず触ってみたくなる口先ですね。
スリムなオチョボ口を持つ和食器
口が細いと比較的キレが良いというのは、私の経験上本当です。おそらく、口が細いので器の傾きを戻す時、お醤油などの戻りが早くその為に空気も一緒に逆流して吸い戻す為だと思っています。 最後のゆっくりとした流れの時に後ろ漏れするのですが、これをいかに少なくするかという事で、細くすれば解決するのですが、量が少なくなるという問題がありますのでそこは兼ね合い・バランスという事になります。
たとえば醤油さしならば流れる量は必要ありませんのでこんなスリムな口で。
これは陶器の醤油さしコロンのオチョボ口なんですが、これも切れが良く好評です。 作り手によると、内側の空洞をいかに滑らかな仕上げにして水流を滑らかにするかも大切なんだそうです。
このお品は小さいですが、すべて脅威の手作り。 この細い口はボディとは別にロクロで手作りするんです。それもヘラなど道具は使わずに人差し指の太さまで作って、外側からキュと押さえて細くするわけです。 こんな小さな口をロクロづくりするのです。 想像しただけでワクワクしませんか?
上が開いている口の場合はこれは当てはまりません。
写真は完全なオープン型で、これは例外ともいえるかもしれません。 ただ、ページをご覧になると口の部分に縦の溝がある事にお気づきかと思います。また口先は下に曲げてデザインされている「キレ」については秀作です。
きめ細やかなスベスベ肌お願い
ボディの内側は見る事ができますが、細い口の内側まではなかなか見にくいものです。 でも、できる限り観察してみてください。
土の小さな塊(バリ)などがなくてできる限り滑らかである事で、真っすぐにスムーズにお醤油やお酒などが流れてメリハリのよい流れの動作になります。
逆に凹凸や曲がりがあって流れが悪いと流れメリハリがなくなって後ろ漏れしやすくなります。
先ほどの「醤油さしコロン」の先をなぜヘラではなく手指でロクロを回しながら作るのかというと、内側をできる限り滑らかに仕上げたいからなんだそうです。
その誠意と技術、職人魂には脱帽するばかりです。
とはいえ、大好きな和食器ですから、実用性一辺倒ともいかずデザインとの兼ね合いもあります。 そこはご自身でのご判断をお願いいたします。 口の先の下に髭のような塊をつけたり、溝を彫ったりと様々な工夫をしている事も例外としてあります。 耐久性なども少し気にしながらお選びになると良いと思います。
いずれにしても、通販などでお求めになる際は「写真や説明」だけが頼りですので特に写真をジックリと観察される事をお薦めします。
また遠慮なくお店の方に質問をしてみましょう。 どんな答えが返ってくるかで専門性も判断でる事でしょう。
口でも片口と呼ばれる品は、沢山あります。 入れる物によってもデザインは変わります。それはまたの機会にお話させてください。
それではまた。