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木の心・チームの力
木の和食器
歴史ある木の器
当店の屋号は、【大人の和食器屋 さんすい】ですが、読者の皆様が和食器とお聞きになるとまず思い浮かべるのは、やはり陶器や磁器の器たちではないでしょうか。
ところが時代考証が施されているNHK大河ドラマなどの戦国時代より前の物語などを注意深く拝見していると・・・なんと使っている器は木製が多いようです。
陶磁器の窯を含めた技法が
大陸から伝えられる以前は、木製が日本の和食器の中心にいたわけです。
木の和食器の魅力
その内部に空気を含む「木」は陶磁器に比べると堅牢性では劣るものの、触ったときの温かさや木目の美しさなどの素敵な魅力があって、当店でもソーサーやカトラリーなどで沢山の種類を採用しています。
最近はノーチェが人気で、入荷しては売り切れを繰り返していますが、このシリーズの胡桃(くるみ)の木の年輪模様を見ているとすべてに個性があり面白く見惚れてしまいます。
木の心
そういえば、法隆寺三重塔や薬師寺の再建などで代々ご活躍された故西岡常一(つねかず)さんの著書「木のいのち 木のこころ」の中から法隆寺大工の口伝に素敵な言葉があります。
心をひとつに
「百工あれば百念あり、 これを一つに統(す)ぶる。これ棟梁の器量 百輪ひとつに止(まと)まる。これが正なり。」
オッと、眠くならないでくださいね(笑)
これは「百人の大工がいれば百人の考えがあるので心得なさい。肝心なのは一(ひとつ)に止(まと)まる事、つまり一つにまとめる事これが「正」であるとされています。
この「百人の大工」を
「四人の家族」や
「二人の夫婦」や
「五人の友達」や
「一万五千人の従業員」などに置き換えるとなんだか考えさせられますね。
個性を活かす
さて、その法隆寺大工の口伝の極意とは
「木は包囲のまま使え」
このままではちょっとわかりづらいのですが、
山の中腹辺りまでの木は陽をいっぱい受けながらも風にあたり、嵐に叩かれ雨にも打たれます。
気質も荒く、癖もまた強いから柱や梁など建物を支える骨組みに使います。
対して谷の木は水分と養分に恵まれて素直に育つが、ひ弱な為に天井や化粧板などの造作材に使えの意味です。
お掃除好きな働き者の優しい旦那もいれば、店主のようにろくに働かないけど毎日笑わせてくれるダンナもいるし、ひたすら外で稼いでくれる奥様もいれば、家事全般得意な奥様もいらっしゃる。
大人しいけど優しい子供もいれば、ちょっと気性は激しいけれど行動力抜群の子供もいる。
短所を短所ばかりとは見ず長所としてとらえ、それぞれにそれぞれの居場所と生きがいを探してあげる。
そのような意味なのでしょう
個性を上手に組み合わせる
そしてもうひとつ「木組みは寸法で組まず、木の癖で組め」
木組みは寸法通りに刻んでから組み立てるものですが、ねじれて育つと元の姿になろうとして右や左に戻ろうとしたり、反ったりするそうです。
木の組み合わせで用材同士の癖を封じます。 建物の歪みを防ぐ知恵を言っています。
昔よくお見受けしたのが、あんまり愛想なくて口数も少ないけれど働き者のオヤジさんと、やったらと明るくてよく笑いしゃべる奥さん。二人で一人みたいなご夫婦。
その他、アクセルとブレーキのようなカップルやご友人など。 もちろん趣味や好みが同じである事も素敵なのですが、同じ気質よりも少し違う方がお互いを修整できて長続きする事が多いのも確かですね。
木の心・チームの力 まとめ
夫婦・家族・友人・チーム・会社・・・みんな色々な個性で成り立った集団が真価を発揮するためにはお互いの個性を認め大切にして組み合わせてミンナで一方向を向く事が大切だと諭しているように思いました。
粘土から自由自在に形作る陶磁器とは違い、建物や和食器となってからも呼吸し動きのある「木」を操る職人だんならではの言葉ですね。
和食器屋も「働き者で真面目な女将」と「働きは少ない(^^;けれど頭はやわらかい店主」で何とか歯車は回っております。 夜、晩酌をしながら一方向を向くように会話するのですが、いつもナニがナンだかわからないお話しになってバタンキュー。 皆様はいかがですか?