黄瀬戸織部リム浅小鉢

形デザインの魅力

リムと厚みの存在感

7・8mmはあろうかと思われる厚みが醸し出す重厚感や2cmほどの広めのリムと楕円の形、そのどれもがこの浅小鉢にしかない存在感を与える大切なピースになっています。

裏の魅力・脚の魅力

三本の足（脚）で支えるデザインですのでガタつく事はありません。　もちろん4本脚の方が安定はしていますが、その場合高さ調整で削る必要がありますので畳付（テーブルとの接触面）はサラサラ程度という事になります。　この浅小鉢の足はその畳付まで施釉されています。　これは道具土と呼ばれる捨て土で胴体を支えて三本の脚を浮かせて焼成するからです。　三本の脚の間の削り跡はこの道具土の跡です。
手間のかかる作り方ですが、テーブルを傷つける事も極力少なくなりますし、デザインも優雅な印象ですね。

織部ごのみ

豊臣秀吉の時代、茶人千利休の弟子でもあった武将古田織部。彼が好んで作らせた当時としては斬新な色や形のデザインは「織部ごのみ（好み）」として流行したといわれています。現在ではその緑色の釉薬を織部秞と呼んでいますが、本来の織部は「織部ごのみ」を指し、織部が好んだであろう色や形が斬新なデザインを指すのではないかと思っています。本来なら黄瀬戸緑紋浅小鉢とでも名付けるところなのでしょうが、その斬新にも見える形デザインはまさに古田織部の「織部ごのみ」。織部の心を伝えるという意味です。

色やテイストの魅力

柔らかな自然色の黄瀬戸

リムを含めた楕円の美しい曲線とともに全体に柔らかな雰囲気を醸し出しているのが黄瀬戸のシックな黄色。　正確には黄色に微量の赤を混ぜた山吹色系の黄色といったところでしょうか。　都会の看板やネオンサインの黄色ではなく秋の山々の木々の葉のような自然でシックな黄色で、やさしく上品な和食器という印象を与えてくれます。 　普段は見える事のない小鉢の裏側にまで施されている事に好感を覚えます。

水墨画のような点紋

この浅小鉢の水墨画のようなふわりとした織部秞が黄瀬戸の柔らかな色彩に加えて、元々全体に硬派な趣のこの小鉢にやわらかな印象を届けてくれています。このふわりとした緑色はこの器の大切な魅力だと思います。

存在感あるテイスト

この浅小鉢を実際に手にすると、どっしりとした重みと細かな立体感を感じます。その凹凸に絡まるように茶系の窯変がエッジを中心に現れ、その立体感を強調しています。広いリムや厚みに加えてこのゴツとしたテイストがこの浅小鉢の存在感にハナを添えています。

この浅小鉢の和食器コーディネート

器をも喰らう食卓

毎日の食卓で一番出番の多い形デザインなのですが、ポイントは同じ時代からの釉薬使いである古瀬戸長皿とのコンビ。　同系色でありながらまるで違うテイストで共演というより見事なまでの競演、いや響き合う「饗演」と言ったところです。

安土桃山モダン

このテーブル、なんだか織田信長公が生きてたら喜びそうな気がするのは私だけでしょうか。　伝統の織部と黄瀬戸を楽しく合わせてみました。黄瀬戸は基本的に茶系に近く、他の土物和食器とコーディネートしやすい印象です。